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あわあわと過ぎ行く日々のあれこれを,気の向くままに書き留めていきます

■天童荒太/『悼む人』

天童荒太の新作『悼む人』を読んだ。

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全国を放浪し,死者を悼む旅を続ける坂築静人。彼は,誰かが亡くなったという場所を訪れては,周囲の人々に「その人は誰を愛し,誰に愛され,どんなことをして人に感謝されたことがあったか」を尋ねて回り,そこで得られた話をもとに死者を悼む。いつしか人々は,彼を「悼む人」と呼ぶようになった。
フリーライターの蒔野抗太郎。挑発的でショッキングな記事を書き続ける彼は,取材の過程で静人の存在を知る。彼は,静人の行為に反発を覚えながらも,幼かった自分と母親を捨てた憎むべき父親の死,取材で追い続けたある殺人事件の被害者女性の壮絶な死,そして自分自身の身に降りかかった瀕死体験など,いくつもの死を通じ,いつしか静人を理解するようになる。
夫を殺し,刑期を務めあげ出所してきた奈義倖世。生きることも死ぬこともままならず,自分の進むべき方向を見失っていた彼女は,かつて自分が夫を刺し殺した現場へとたどり着いた。そこで倖世は偶然,静人が地面に膝をつき,その場所で亡くなった倖世の夫を悼む姿を目撃する。死者を悼む旅を続けているという静人の言葉に激しく心をかき乱された倖世は,彼の言葉の真意を理解するべく,静人の後についてともに旅を続けていく。
静人の帰りを待ち続ける家族たち。母親の巡子は,末期がんに侵されていた。そして静人の妹の美汐は,別れた男の子供を身ごもり,母親になろうとしていた。
静人の旅はなおも続く――。


作者がこの作品の構想を抱いてから完成までに7年の歳月が費やされたという。まさに全身全霊を傾け,持てる力の全てを注ぎ込んだかのような重みを感じさせる作品である。これほどまでにどっぷりと深く,そして真正面から「死」という作品に向き合おうとする作品は,そうそうあるものではない。そのテーマゆえに,読みながら息苦しいほどの重さを感じる場面も少なくはなかった。しかし,それでも先へ,先へとページをめくらずにいられない。恥ずかしながら,思わずぽろぽろと涙がこぼれてしまう場面もあった。これから読もうという方には,電車の中などではなく,自宅にてひとり静かに読まれることをおすすめしたい。

『王様のブランチ』でおなじみの編集者・松田哲夫氏は,この作品を「21世紀以降の作品の中でベストワン」と大絶賛しておられたけれど,残念ながら,僕はそこまでこの作品にのめりこむことは出来なかった。特に,妻・倖世に「自分を殺せ」とせがみ続け,死した後も倖世にしつこくまとわり続ける夫・朔也の設定に,どうもすんなりと受け入れにくいところがあり,ちょいと冷ややかな気持ちになってしまうのよねん。
その一方で,旅を続ける静人の帰りを待ち続ける母・巡子の姿には,やはり涙を禁じえない。その設定などに,ややあざといかなとも思える部分がないわけではないけれど,自分にもそう遠くない将来,両親を看取るときが必ず訪れるのだ。そうしたあれこれを想像しながら読んでいると,胸がキリキリと締め付けられ,切ないったらありゃしない。

この作品は,第140回直木賞の候補に挙げられている。天童氏は,これが3回目のノミネートだ。
発表は今週木曜日。さあ,果たしてめでたく受賞となるか?

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